迦具土神
伊邪那美命が最後に産んだ火の神。その炎で母を焼き殺したため、父・伊邪那岐命に十拳剣で斬られた。流れた血からは山と雷の神々が生まれ、以来「火を起こし、火を鎮める神」として祀られる。
当局が発行する鑑定書には、その一本に宿った神の名が記される。ここに載る二十五柱が、いま棒に宿りうる八百万の神である。棒の属性と、その一本でもっとも際立つ特徴——曲がり、焦げ、枝分かれ、苔、泥、白く灼けた木肌——から、宿る神が定まる。
伊邪那美命が最後に産んだ火の神。その炎で母を焼き殺したため、父・伊邪那岐命に十拳剣で斬られた。流れた血からは山と雷の神々が生まれ、以来「火を起こし、火を鎮める神」として祀られる。
一つ目の鍛冶神。炉の火を見つめ続けた製鉄職人の姿を映すと言われ、刀剣と鉄器を打つ技を司る。焼け跡のある棒、炭のように黒ずんだ棒はこの神の領分にある。
海そのものを司る大神。海神の宮に山幸彦を迎え、潮の満ち引きを操る二つの玉を授けたと伝わる。波に洗われた流木、水を含んで滑らかになった棒はこの神が撫でたもの。
伊邪那美命から生まれた水の女神。井戸・泉・用水を守り、日照りには雨を、長雨には引きを司る。川辺や湿った場所で拾われた棒の守り神。
迦具土神の血から生まれた、龍の姿をとる水神。高い山に降る雨と谷に積もる雪を司り、貴船に祀られて雨乞いの神とされる。蛇のようにうねる棒はこの神を宿す。
迦具土神を斬った剣に付いた血から生まれた武神。国譲りの談判では、剣を波の上に逆さに立ててその切先にあぐらをかき、大国主命に迫ったと伝わる。鹿島神宮の祭神。
丹塗矢に化した神と玉依日売の間に生まれ、雷鳴とともに天へ昇ったと伝わる若い雷神。上賀茂神社の祭神で、雷を落として厄と穢れを祓う。
建御雷神とともに葦原中国を平定した剣の神。名の「フツ」は物を一息に断ち切る音だという。香取神宮に祀られ、まっすぐで鋭い一本に宿る。
伊邪那岐命が吹いた息から生まれ、国土を覆っていた朝霧を一息に吹き払ったと伝わる風の神。軽く細い棒、風を切る形をした棒はこの神のもの。
国譲りの際、建御雷神と力比べに敗れて諏訪へ退いた神。以後その地を守り、風雨と狩猟を司る。この力比べは相撲の起源とも語られる。太く力強い棒に宿る。
すべての山を統べる大神。木花之佐久夜毘売と石長比売の父にあたる。山に生きる木も、そこに眠る岩も鉱脈もこの神の領分にあり、山林で拾われた棒の本来の持ち主である。
伊邪那美命から生まれた土の神。器を焼く粘土から田を支える土まで、地面そのものを司る。泥をかぶった棒、半ば土に埋もれていた棒はこの神に抱かれていた。
少彦名神とともに国土を造り、のちにその国を天つ神に譲った出雲の主宰神。幾度も試練に遭いながら生き延びた忍耐の神であり、縁を結ぶ神でもある。長く風雪に耐えた棒に宿る。
穀物と実りを司る神。全国の稲荷社に祀られ、狐を使いとする。朱を帯びた棒、実りの季節に拾われた棒はこの神の徴を持つ。
伊邪那岐命・伊邪那美命が生んだ、樹木そのものの神。世のあらゆる木はこの神の分身であり、当局が鑑定する棒の大半は、元をたどればこの神の身体の一部である。
須佐之男命の子。天から携え降りた木の種を日本中に播いて青山に変えたと伝わり、紀伊の国に祀られる。まっすぐ育った、素性の良い枝に宿る。
伊邪那岐命とともに国を生んだ母神。火の神を産んだ折に焼かれて命を落とし、そのまま黄泉の国の主となった。生と死の両方を知る神。朽ちかけた棒、腐葉に埋もれていた棒に宿る。
乱暴の果てに高天原を追われた嵐の神。出雲へ下って八岐大蛇を斬り、その尾から現れた草薙剣を天照大御神に献じた。荒々しく折れた棒、嵐の翌朝に落ちていた棒はこの神のもの。
八つの頭と八つの尾を持ち、八つの谷と八つの峰にまたがったと伝わる大蛇。須佐之男命に斬られ、その尾から草薙剣が現れた。神というよりは荒魂だが、幾重にもうねる一本はこれを宿す。
高天原を統べる太陽の女神。弟・須佐之男命の乱暴に怒って天岩戸に隠れ、世界は闇に沈んだ。神々が岩戸の前で舞い、笑い声に誘われて姿を現したことで光が戻った。日に灼けて白く乾いた棒に宿る。
桜の花のように咲き、そして散る美の女神。大山津見神の娘であり、富士山の神ともされる。細く華奢な棒、芽や花を残した枝はこの神の姿を映す。
天と地が分かれたその時、いちばん初めに高天原に現れた神。何も語らず、姿も見せず、名だけが記された。どの属性にも属さない静かな一本に宿る。
天が永遠に立ち続けること、それ自体が神となったもの。伴侶を持たない独神で、現れるとすぐに身を隠したと記される。まっすぐ立つ一本の棒、そのものの神。
大地が永遠に立ち続けることの神格化。国土そのものの根源とされ、動かないことを本性とする。地に深く刺さっていた棒、根を残したままの棒に宿る。
手のひらに乗るほど小さな体で海の向こうから現れ、大国主神とともに国を造った神。医薬と酒造を伝えたとされる。小さくとも侮れない一本に宿る。